実話をもとにしたフィクション

実話を基にしたフィクション、それはもはやファンタジーだろう。これは僕の人生を大幅に改変した物語である。

第2話 キットカット

『リバー、君は寡黙だね。』

ある老婆が彼にそう言った。彼は笑顔で頷いたが、本当は彼は寡黙な人間などではなかった。話す相手さえ近くにいれば、きっと彼は誰よりもよく喋るだろう…きっと…

 クリ須・リバー。北欧の某会社が建てた一軒家に住む彼には、妹がいる。名はアモーレ。日本人ならば誰でも一度は聞いたことがあるであろう高校名に『女子』を付ければ完成する名前の高校に通う、ごく普通のJ&Kだ。彼と妹は頻繁に話をするような仲ではなかったが、漫画に出てくるような気まずい関係でもなかった。地上に這い上がったセミたちのコンサートが人々の曇らせる夏のある日、リバーとの話の流れの中で妹はふとこんなことを口にした。

「昔の人は日が昇る頃に起きて、沈めば寝てたぐらいだからね。」

1年に1度聞くか聞かないか程度のレアなものだが、確かに有名な言葉である。

「しかし、おかしな話だ。ほんとに昔の人はそうしていたのか?ちょっと寝すぎじゃないか!」

そう吐き捨てて、彼は自室に戻って行った。もう妹に返事など求めていなかったのだ。きっと彼にとって、妹は十分な話し相手ではないのだろう…きっと……

「夏はまだいいさ、でも冬なんか14時間近く寝ることになるんじゃないか?きっと日が昇る頃に起きて、日が沈めば眠るってのはヨーロッパとかカナダの人の話だろう。向こうには夜10時くらいに日が沈むようなところが結構あるからね。事実は知らないけど、日本でそんなことするのは時間の無駄さ!」

昔の人が実際どういう生活をしていたか、そんなことはどうでもよかった。

「今日は疲れたな、8時だけどもう寝よう。」

彼はよく不満を口にする、そうチョコレートを食べるくらいの頻度で……